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「30/70（トレンタセッタンタ）」を立ち上げるにあたり
寒い地方で防寒を目的に誕生したセーター。スコットランドのフィッシャーマンズセーターは、名前の通り地元の漁師が15世紀から愛用していたことで知られています。現在のようなセーターが登場したのは1880年代。ヨットやフットボール、自転車、テニスなど、スポーツが盛んになり、暖かく、軽く、柔らかく、着心地に優れ、ウール素材の特性上、汗をうまく逃がすことから、スポーツを楽しむために着用されました。驚くことに、その大半は、黒の無地のタートルネックだったそうです。
話は変わります。現在、セーターは、さまざまな色や素材、デザイン、サイズ、そして世界中のあらゆるブランドが作り、世の中に山のように溢れています。着用する目的も着る人によって千差万別です。その数多ある中から本当に品質の良いセーターを見つけることは、専門家でない限り本当に難しいものです。
では、良質なセーターとはどういうものなのか？ それは、厳選された良い素材を使い、丁寧に編み、多様化する現代人の生活に合うようにデザインされているセーターです。そういう良質なセーターは、前述の通りなかなか見つけることが難しく、どうしても世界の有名ブランドの製品の宣伝力には勝てず日の目を浴びることが少なかったのです。
しかし、日本の新潟には、「第一ニットマーケティング」という知られざる良質なセーターを作るメーカーがあります。世界の有名ブランドからは評価されているのに、日本では知られていないメーカーがあるのです。以前、新潟の第一ニットマーケティングの工場を取材させていただく機会があり、その際に見た、セーター作りの技術やそこで働く人たちの姿勢はとても素晴らしく、感動したのを今でも忘れません。
ということで、「そんな良質なセーターを今こそ知ってもらいたい」、「日本の良いものを世界の人に知ってもらいたい」、「日本を元気に、地方から元気に！」という思いのもと、日本貿易振興機構（JETRO）新潟事務所と組んで、僕がプロデュースする新しいファクトリーブランドを立ち上げることにしました。名前は「30/70（トレンタセッタンタ）」。厳選された上質な組み合わせ素材を使った大人の男性と女性のためのセーターブランドです。
名前は、触れた瞬間に、着た瞬間に、圧倒的な極上の心地良さを感じられる「シルク30%×カシミア70%」という素材の混紡率からつけました。その素材を最大限に感じていただきたい思いで、色や柄は排除。あえて、黒の無地だけに絞りました。そして、徹底的にシンプルなデザインにしています。カタチも、クルーネックやタートルネック、そしてVネック、ワンピースなど、長い歴史の中で老若男女、さまざまな人たちに愛されてきたベーシックなものを採用。どなたに着ていただいても似合うように、とても基本的なものにしています。わかりやすく言えば、「30/70（トレンタセッタンタ）」は、「究極の普通」のセーターなのかもしれません。
先行きが不透明な状態が続き、さまざまな価値観が変わろうとしています。それは何も自分を取り巻く環境や状況だけの話ではありません。ものやこと、身近なファッションに対する考え方や価値観も大きく変わろうとしています。大量生産、大量消費で生まれた、安いトレンド（流行）の洋服を毎年買い替えたり、ブランドものを沢山所有することが幸せと感じた時代から……、長く着ることができるシンプルな洋服を、自分に合った必要最低限の量だけを持って暮らすことが幸せと感じる時代に突入したのです。
長く着る、長く愛用することを目的に作られた「30/70（トレンタセッタンタ）」のセーターを通じて、少しでも皆様の人生を豊かにするお手伝いができれば幸いです。
Yoshimasa Hoshiba
『FORZA STYLE』編集長／ファッションディレクター
株式会社スタイルクリニック代表取締役
【プロフィール】『LEON』や『OCEANS』など数々の人気男性誌を手掛け、独立。株式会社スタイルクリニックを設立し代表取締役に就任。フジテレビ『にじいろジーン』、テレビ朝日『グッド！モーニング』、TBS『サタデープラス』、日本テレビ『ヒルナンデス』、テレビ東京『なないろ日和』など、テレビ番組のファッションコーナーでもおなじみ。FM TOKYOでは、ラジオ番組『SEIKO ASTRON presents World Cruise』のメインパーソナリティも務める。2013年、船旅を愛する男女誌『Sette Mari（セッテ・マーリ）』の編集長に。You Tubeのファッション番組BR.CHANNELファッションカレッジでは、講師を務めている。『干場義雅のお洒落の本質』（PHP出版）、『干場義雅の色気と着こなし』（宝島社）、『干場義雅が教える大人のカジュアル』（日本文芸社）、『干場義雅が語る女性のお洒落』（フォーエバートゥエンティワン）』、『世界のエリートは知っているお洒落の本質』（集英社文庫）、『干場義雅が愛する究極のブランド105』（日本文芸社）、など、著書も多数。新聞、テレビ、雑誌、ラジオ、トークショー、イベントなど、その活動はメディアの枠を越えて多岐に及ぶ。現在は、動画を中心に上質なライフスタイルを提案する講談社のウェブマガジン『FORZA STYLE』の編集長として活躍中。インスタグラム@yoshimasa_hoshibaも人気。
